清水邦夫の『楽屋』、この戯曲はあまりに有名で、あまりに多くの劇団や劇場で上演されているので、これまではいっさい触れずにいた。ワークショップなどのテキストとして採り上げたこともない。ところが昨年、教えている近畿大学の舞台芸術専攻の実習公演の演目の候補に挙がってきて、何十年ぶりかで再読する羽目になった。1970年代後半までは辛うじてあった「新劇」、そしてまだ居た「新劇俳優・プロンプター」の存在を背景にしているから、現在そのままで上演することにはちょっと抵抗があるものの、新人俳優の訓練のためのテキストとしては良いかもしれないと思った。なにせ、登場人物は女四人だから、圧倒的に女性の比率が高い演劇学校やワークショップなどの現場には打って付けの戯曲である。そして、これをやるためにチェーホフやシェークスピア、三好十郎などについて少しはお勉強しなくてはならないので、演劇の「教科書」として相応しい。ただし、プロンプターという存在や戦前・戦中の俳優、劇中劇の題材など、今やるにはやはり違和感はある。『楽屋・21世紀ヴァージョン』が出来ないものかなあ、と思いながら稽古している。
MODE 松本修
0 件のコメント:
コメントを投稿